では、具体的に体験した「今ここ」について、 もう少し私のお話しをさせて下さい。
前回までのコラムはこちら👇
2022.01.14
やってみたい習い事ランキングには、たいてい上の方にあがる「ヨガ」ですから、ちょっと興味がある、いつかやってみたい、あるいはもう既にやっている...
2022.02.04
では、「イマココ」とは何なのでしょうか。
前回のコラムはこちら👇
イマココとは、「今ここにいる」
...
マウイの学校を卒業して帰ってきてからも、まだ私の「今ここ」 は落ちておりませんでした。
それは素晴らしい体験だと憧れ、勝手に期待していたからであり、 いつかきっと私も…と。 ヨガを続けていく環境に身を置くことにします。
面白い話ですよね。「今ここ」は、 生まれてからいくらでも体験してきているというのに。
まさに灯台下暗し。
ですから、学ぶというのは知識を得ることだけでなく、物事の見方を変えること や気づき でもあると理解できます。
さて、 学校を卒業したとはいえ、ヨガ歴はまだ浅く駆け出しの私でしたが、 それでもいろんなクラスを受けながら感じていたのは、
「クラスはキツイくらいがちょうどいい」
ということでした。
ウツ状態からきているらしい背中の痛みはありましたが、 リラックスクラスでは身体への集中が続かず、 心はまた過去へ引き戻され、 落ち込みのループから抜け出せずに苦しいのです。
これはマウイの日課であった、 瞑想の時間が苦手だったことと似ています。
ひょっ子がハードなクラスについていくためには、 呼吸が乱れないよう集中しながら、 まだ名前も知らない筋肉や骨のパーツ、 内臓や皮膚や目線などと、 ひたむきに自分の身体と向き合わなければなりません。
しかし、ここまでくると、アサナ(ポーズ) に没頭している私の思考は、 もうスタジオのドアからふらふらと外へ出て行くことはありません 。
束の間の穏やかな気持ち。心休める場所に戻ってきたような、自分はちゃんとここに居たんだ という安心感。
エネルギーに満ちて、身体の軸が定まり、マインド(意識・思考) が静かになることではじめてリラックスは訪れました。
そしてこの時、自分のポテンシャルより少しだけ難しいことに挑戦することが、「 今ここ」の集中を生み出しやすい と感じていました。
1970年代に、心理学者ミハイ・ チクセントミハイ氏によって提唱された「フロー」 という状態があります。
これは、 最高の集中とリラックスが同時にできている状態を示します。
時間が経つのを忘れるほど作業に没頭し、 外から受ける刺激にも気づかなくなる状態のことです。
フロー状態に到達すると、集中力や創造性が高まるだけでなく、とても気持ちがいいと言われます。
つまり、マットの上のフローに入った時、エゴはなりを潜め、 リラックスして周りと調和し、「今ここ」の状態になります。
私たちは普段、 結果を求められることが圧倒的に多いと思いますが、 まずは行為を行なっている過程そのものを楽しんでみるのです。
こうして机の上だけでは解決しなかった疑問も、 身体を動かし深く没入することで、少しずつ現実的な「今ここ」 の答え合わせをしていきます。
『知識と自分の実践や経験が合わさった時、やっとその人の知恵となる。』
点と点をつなぐー。
先生の声が、やっとリアルに聞こえてきました。
ヨガにはさまざまな流派や強度がありますが、 これまでは総じて運動量の多い「陽のヨガ」 について書いてきました。
この「陽」とはなんぞやということで、古代中国の「陰陽論」 について少しだけ触れてみます。
宇宙の万物は「陰と陽」に分けられ、 私たちの中にも存在しているといわれます。
陰陽や陰陽五行については、また後ほど詳しく書こうと思いますが、 今はこの陽と陰には善悪の区別はない ということだけ先に説明 させて下さい。
例えば陰陽とは、
太陽は陽で 月は陰
男性は陽で 女性は陰
上は陽で 下は陰
興奮は陽で 鎮静は陰
硬いは陽で 柔らかいは陰
まだまだたくさんあるのですが、ざっくりとこんな感じです。
さて、ヨガのプラクティスをする際、ハードな「陽のヨガ」 を好む私のようなタイプは、速さや刺激への関心、 競争心のようなものがあることを自覚しておく必要があります。
中医学では常にバランスを説きますから、 マラソンで言えばペースメーカー役のような、 もう一人の自分の声に耳を傾ける、心を開くという陰の性質、 謙虚さや感受性も育てていく必要があります。
一方で、静かで内向的、 控えめで少々消極的な陰タイプの方もいらっしゃいます。 こちらは強さや粘り、 挑戦する陽の要素も育てていく必要があります。
ここで陰陽太極図をよく見ていくと、 白いエリアにも黒い点があることに気付きます。
陽の中にもわずかな陰が存在しており、 完全なる陽になることはありません。それがバランスなのです。
そんな陰陽の量は、絶えず変化もしています。
ですから、陰陽どちらのプラクティスに重きをおくかは、 個人それぞれの性質、 さらには人生の節目で変わることを心に留めておく必要があります ね。
最後に。
“陰も極まれば陽に転じる”
もしどちらかにバランスを崩していきすぎても、 それが極に達すれば反対に転化していくという特性もあります。
前者は量的な変化で、こちらは質的な変化です。
まさに冬至などは陰が極まっているポイントで、 そこを過ぎるとエネルギーは陽に転化し、 少しずつ昼間の時間が長くなっていきます。
明けない夜もありません。
ですから、むやみにコントロールせず、 ジャッジメントするのでもなく、 無理に正しくあろうとする必要もありません。
宇宙のあり方にしたがって、 心とからだ共に自然なありのままの状態に戻してあげること。
陰陽学説を知ることは、 移り変わる季節に合わせた暮らし方や食べ物など、 養生法にもつながっていきます。