先日、僕と同じ高校に通っていた後輩が働いている三重県多気郡多気町の農業法人に行ってきました。
環境保全型で画期的なスマート農業に取り組んでいる、Pomona Farmというところです。
Pomona Farmでは、さらに深刻化するであろう塩害化と食料供給問題という大きな問題を解決すべく、今まで培ってきた “Moisculture”(湿度で栽培する)技術を応用させた「海水農業」という未来型環境保全農業を今後展開されます。
今回は、そもそも塩害化と食料供給問題にはどういう関係があるのか、海水農業とはどんなものなのかを、ご紹介できればと思います。
災害と食料の関係は、もはや無視できない状態に
現在、気候変動の影響により、洪水や干ばつなどの災害が相次いで発生し、農業に甚大な被害が起きています。
今後ますます世界の人口は増え、食料需要量が増加すると言われていますが、食料を作る農地は年々減ってきています。
食料供給量が食料需要量を満たすことができない危機的な状況が差し迫る中、そのような災害や海水面の上昇に起因する「塩害」も、現在世界で深刻化してきています。
これは、今すぐに解決しなければならない課題の一つです。
2050年までに半数の農耕地が塩害の被害に
では「塩害」とは何なのか。
塩害とは、作物や建物が「塩」によって劣化や腐食、枯死する被害のことを言います。
農業において必要不可欠なものが3つあるとするならば、それは水・土・光の3つだと一般的に言われています。
そんな重要な土壌が塩害化されてしまうと、そこで農作物を栽培することは非常に困難になります。
そのメカニズムは、塩害化された土地で植物は根から水を吸収できなくなり枯れてしまうというものです。(下記図解を参照)
そして、農研機構によると、2050年までに推定50%の農耕地が塩害の被害にあうとされています。
このままでは塩害による被害で、より一層食料を供給することが困難になることが予想されます。
参照:Food and Agriculture Organization of the United Nations
常識を疑え。農作物を海水で育てる?!
そんな塩害を引き起こすのが「海水」ですが、水の惑星と言われる地球には水の約97%が海水として存在しており、農業に利用できる淡水はわずか3%ほどしか存在していません。
これまで干ばつ化が進む地域などでは、淡水化装置を使って海水から塩分を除去し農業用水に利用する方法などが試されていました。
しかし、この方法では莫大なコストがかかる上にエネルギー消費が激しく、効率も悪いため、大きな普及には至りませんでした。
ですが、そんな時にこそブレイクスルーは生まれるのです。
今までどうしようもなかった海水を上手く利用できないかと考え、逆の発想で農作物を海水で育てるというのが、今回のテーマである「海水農業」というものです。
海水農業とは?
まず、海水農業の基盤となる「Moisculture(モイスカルチャー)」がどういうものなのかを、Pomona FarmのパートナースタートアップであるN-ARKさんのHPより抜粋します。
5mm程の特殊繊維で自然の土壌の表層約15cmを再現する技術で、特殊繊維によって水を水分気化し、植物に水分枯渇ストレスをかけながら育てることで、糖度やビタミンが強化された野菜を栽培することができます。モイスカルチャーで使用する水は従来の灌漑農法の10分の1で済み、水が豊富でない土地でも応用可能な栽培技術です。
このように、今まで必要不可欠だと思われていた土壌を利用しなくても栽培できる技術開発で、農作物を育てることができない塩害化した土地でも取り入れられる画期的な農業です。
Pomono Farmによると、酸性の雨とアルカリ性の海水を中和させ、品種に合わせた様々な種類の根を育成し、地中と空中の水分と養分を吸収出来るよう特殊な栽培をしたのが、Moisculture技術を応用させた「海水農業」と言われるものです。
また、海水農業の特徴として、海水に含まれる豊富なミネラルや養分を利用することができるため、栄養価の高い作物を栽培することを可能にします。
既にベビーリーフなどの野菜栽培には成功しているとのことで、今後の発展にますます期待が膨らみます。
最後に
Pomona Farmは、なぜ海水農業という分野に参入するのか。
それは、気候変動が深刻化する未来を予想し、それに起因する数多くの課題・問題を本気で解決したいという想いがあるからだと、直接話を聞いて強く感じました。
ビジョンを持って取り組まれている姿、そして画期的な分野にも関わらず一歩ずつ現実化させている行動力に心を打たれました。
そんなPomona Farmの代表を務める豊永さんの娘さんのお名前は、AINA FARMと同じアイナちゃんでした。
そんなPomona Farmが挑戦するクラウドファンディングはこちら。